自殺島 (1〜2) ★★★★

自殺島 1―サバイバル極限ドラマ (ジェッツコミックス)

自殺島 1―サバイバル極限ドラマ (ジェッツコミックス)

ホーリーランドの作者の作品ということで読んでみました。
 
〜あらすじ〜
主人公セイは何度も薬物で自殺を図り、病院へ担ぎ込まれていた。
政府の方針で、自殺を繰り返す者の仲で生存権を放棄したものは自殺島という島に送られることになり、セイの他数十人が集められた。
すぐに自ら命を絶つ者も多かったが、自分の死に場所くらい自分で選びたいという意思で、彼らはその島でサバイバル生活をするようになる…
 
サバイバルというと、漫画や映画で多く取り上げられる題材なので、さほど新しさというのはありません。
しかしそれが共同生活であるということで、当然様々なトラブルが起こります。
まずは食料の問題。
女性への性的暴行等の問題。
意見の相違による仲間割れの問題。
 
どうなんですかね、やはり法律も無くいつ死んでもいいっていう人でも、
倫理とか恥とかを意識して、自分をコントロールできるものなんですかね。
さすがにそんなことは同じような状況に置かれてみないとわからないですが。
 
セイはあらゆることに興味を持てず、生きることの意味すら理解できずに自殺島までやってきました。
彼はその昔弓道部の先輩と仲良くした時期があり、図書館で色々本を読んで弓の作り方や動物の獲り方について知識がありました。
普通に暮らしていたら絶対に必要なかったそんな知識が、まさかこんなところで役に立つとは…
セイは人知れず弓を作り鹿の生態の研究をし、仲間から離れて野生の鹿を狩りに山に入ります。
あんなに死にたがっていた自分が、生きるために生き物を殺すということに戸惑い、
それでも自分で捕らえた鹿を食べることによって、セイは生きることの何かに気づきます。
 
さてこの漫画の中では色々なサバイバル知識が出てくるんですが、
いちいちそれに対して説明をしてくれるので、とても勉強になりますね。
いや、勉強したって使うこと無いけど。
ホーリーランドでも色んな格闘技の説明が出てきて面白かったです。
全然覚えてないけど。
 
ここまでのところ、結構サクサクとストーリーが進行しています。
変にグダグダと同じネタで引っ張らないので、ある程度緊張感が持続できていますね。
なかなか面白いんじゃないでしょうか。
 
 
余談
ショートパンツの女の子を妙にエロく描くなあこの作者。

高校球児ザワさん (1〜4) ★★★

高校球児 ザワさん 4 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

高校球児 ザワさん 4 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

高校の野球部に女子として在籍する都澤理紗(通称ザワさん)の日常を描いた漫画。
基本的に日常以外のことはなく、リアルでほのぼのとした内容です。
結構楽しめたんですが、さすがにあまりにも内容が無い回とかもあって、
1巻平均10分で読めてしまうのもどうなのかなと思い★3です。
 
ザワさんは別に美人でもないんですが、やはり野球部員にとって一番身近な女性なわけで、
練習中とか普段は女性として意識しなくても、たまに女性っぽいところを見たりすると、みんなエロ目線になってしまいます。
この微妙〜なところがとても高校生らしいなと感じ、バカとしか言いようが無い言動が微笑ましいです。
 
周りの人がザワさんを見るときの偏見に満ちた目や、野球部先輩のイビリみたいなシーンも結構あって、
こういうのがリアルさの要因であり、また新しいところなんでしょうが、個人的にはあまり好きではないですかね。
 
基本的にはバカ漫画なので、特に期待もせずに読めばいいと思います。

君に届け (11) ★★★★

君に届け 11 (マーガレットコミックス)

君に届け 11 (マーガレットコミックス)

爽子がくるみにけじめをつける回。
風早視点のep1の回想。
龍xちづ、やのxピンのフラグ等それぞれの関係性のちょっとした変化を描く回。
爽子x風早の初デート。
 
上記4つのエピソードからなる11巻です。
さて別マ7月号ですでにこの続きも読んだわけですが、うーむ、懸念していたような展開になりつつあります。
そもそもこれはタイトル通り「君に届け」 想いをいかに伝えるかというのがメインテーマとしてあるわけで、
それがお互いに完璧に伝わってしまった後どうするのか、というのは非常に難しいと思います。
これまで散々描いてきた風早と爽子の性格や人柄から、
今後ケンカで大ピンチとか、三角関係に発展とか、そういう展開になるのは考えにくい。
そうなると、恋愛というものに対して不慣れな爽子が、どうやって素直に好意を伝え、また求めていくのかというような、甘々な展開にならざるを得ません。
さて… そこに「君に届け」らしい面白さというのが果たしてありますかね?
 
他の作品を読んでも、やっぱり「君に届け」は違うな!と思っていたものが、
そこらによくある平均的ラブコメに落ちてしまうというのは耐えられません。
続けるなら続けるで、10巻のような感動的な回をまた描けるのかどうか、ちゃんと練った上でやってもらいたいです。
今のままでは人気が出たために無理やり編集が続けさせているとしか思えません。
 
 
余談
本当に爽子がミニスカやらショーパンやら履いてくれたら、それはそれで面白かったかも。
今後はいかにこれまでの展開を裏切るか、爽子が地味子から抜け出せるか!というのにも注目。

G戦場ヘヴンズドア (1〜3 ) ★★★★★

G戦場ヘヴンズドア 3集 (IKKI COMICS)

G戦場ヘヴンズドア 3集 (IKKI COMICS)

漫画家をモデルにしたマンガは数あれど、間違いなくこれが最高傑作。
大物漫画家を父に持つ町蔵と、敏腕編集者を父に持つ鉄男が共に漫画家を目指す物語です。
全3巻、最初から最後まで無駄なコマすらないような内容なので、ストーリー説明は省きます。
 
まずこの絵で多少の好き嫌いは生まれるでしょう。
上手い下手とかいう次元ではない、まさに個性的な絵。
そこに狂気的なまでの言葉の力が合わさり、他に類を見ない作品となっています。
 
これは二人が漫画家を目指す話でありながら、同時に似たもの同士の間に渦巻く同属嫌悪だったり、
その先に生まれる誰も入り込めない友情だったり、ガキから大人への成長だったり、
ともかくとんでもない感情の渦が詰め込まれています。
自分が本当に伝えたいものを言葉や絵にしたとき、
例えそれがある特定の個人に向けられた思いであったとしても、
きっと、たくさんの人の心を震わせるはず。
町蔵が触れた周りの人たちのたくさんの温かい気持ちは、
きっとそのまま町蔵の作品として世の中にたくさんの幸せを運ぶんだろうな。
 
ほとんどの漫画が10冊や20冊かかって描く熱量を、この作品はたった3冊で簡単に上回っています。
逆に言うとこれは、ほんの少しも薄めることができない不器用な物語だとも取れます。
 
この漫画を読むと、少なからず他の漫画に対する見方が変わるかもしれません。
私が過去読んだあらゆる漫画の中でも、ベスト5に入る作品ですね。

ハートを打ちのめせ! (1〜2) ★★★★

ハートを打ちのめせ! 1 (Feelコミックス)

ハートを打ちのめせ! 1 (Feelコミックス)

中学生男女数組の恋愛模様をオムニバス形式で描いた物語。
ちょっと雰囲気は違うんですが、YJで連載されていた「ガールフレンド」という漫画に少し似ている気がしました。
ガールフレンド 1 (ヤングジャンプコミックス)
ガールフレンドの場合は、相手が何を考えているか分からないような状態で、
付き合っているわけでも友達同士でもない曖昧な関係性だったり、身体だけの関係があったり、
駄目だと思いつつも結局性欲に負けてしまい、後になってまた不安になるような感じです。
 
 
さて、ハートを打ちのめせ!なんですが、4人の女の子が出てきます。
まあ基本的に全部どうしようもないし、勿論感情移入なんてできません。
・好きな男を身体の関係だけで釣ろうとする子
・教師を振り回して楽しんでる子
・彼氏に酷い仕打ちを受け他の子に気持ちを移そうとするものの、結局戻ってきてしまう子
・自分の中で嘘の恋愛を作り上げて、その空想に逃げる子
 
とりあえず身体だけでも必要とされればいいやっていう気持ちから、
次第に心の繋がりも求め、離れていても一緒にいられるという安心感を得たいと願ってしまう。
全く子供のままの頭の中身と、大人びていく身体。
うわべで取り繕う友達関係、卒業という別れ。
やっぱりこの物語は高校生じゃなくて中学生っていう設定が必要なんだろうなと思いました。
これだけ不安定で体当たりで、信じられないなら身体に刻み付けてやろうっていう気持ちは、
多分ほんの少しでも大人に近づいてしまうと失われていくものなんだと感じます。
 
この本に対して「感情移入できないから」という理由で評価を下げるのはどうかと思います。
これを一般的な中学生の恋愛と見てカルチャーショックを受けるというのも馬鹿げた話です。
 
ただ心の中にどっしりと座り込むような重苦しい青春の苦悩は、
ほんの少しだけあの頃に思いを馳せる足がかりにはなります。
ガキすぎて恥ずかしがったり自分に正直になれなかったりして、
こんな恋愛とんでもないっていう中学時代を過ごした身としては、
とても輝いて見えるし、憧れるし、もしこんなことをしていたら人生変わっていたのかもしれないなと思います。
 
この作者さんは短編の方が向いているんじゃないですかね。
なんといっても1コマでも凄まじい熱量を込めたものを描いてくるから、
あまりにそれが続くと精神的に疲労してしまい胸焼けを起こしてしまいます。
曖昧なら曖昧なままでいい。全てのものに答えがあるわけではないんだから。
 
少女漫画のただ甘酸っぱかったり切なかったりする恋愛とも違う、
少年漫画の都合のいい妄想を具現化したような空間とも違う、
この人にしか描けない心の奥深くを覗けるような視点がここにはあります。

シガテラ (1〜6) ★★★★

シガテラ(6)<完> (ヤンマガKCスペシャル)

シガテラ(6)<完> (ヤンマガKCスペシャル)

これは連載時に読んでいたんですが、最終回の衝撃は忘れもしません。
ヒミズで精神の崩壊と現実に潜む闇を描いた古谷実ですが、
シガテラではもっと身近で普遍的なテーマを描いています。
 
これを恐怖と取るのか、え、そんなもん?と見るのかは人それぞれなのかもしれません。
私の場合は、このあまりにも淡々とし、唐突に終わりを告げるラストシーンに声も出ませんでした。
 
度々引用して恐縮ですが「半分の月がのぼる空」で、主人公が未来のことを夢に見るシーンがあります。
その中の自分は今迷っている二つの道の片方を進んだ先で、それなりに楽しんでそれなりに幸せそうに過ごしています。
魅力的な女の人とも上手くいきそうだし、仕事も慣れて、社会人として順調な成長を遂げた自分の姿。
ただしそこには、今自分が好きな女の子の姿はなく、もはや顔も思い出せないくらいに記憶が薄れている。
 
シガテラはまさにこれなんです。
今の自分と確実に繋がっている未来なのに、今の自分が大切にしている思いはそこにはない。
これって怖いと思いませんか?

人は変わっていく。見た目だけじゃなくて、中身もどんどん知らない人になっていく。
そして忘れていく。大事な思いも、夢も、好きだった人のことも。
一見たいしたことを描いていないように見えるシガテラが「問題作」として扱われるのは、
この私たちが共通して持っている変化に対する恐怖をありありと描写してしまったからです。
 
気持ちというものの、何と不安定なことか。何と不確かなことか。
対して現実の何と残酷なことか。
漫画という非現実の世界から、見たくない現実を突きつけたシガテラ
巻数も少ないので、一度読んでみることをお勧めします。

GIANT KILLING (7〜14) ★★★★

GIANT KILLING(14) (モーニング KC)

GIANT KILLING(14) (モーニング KC)

基本的にはETUという弱小クラブの成り上がりストーリーを描き、
その中で選手一人一人の葛藤や成長を細かく捉え、
試合においては個々の重要性と戦術理解の大切さを説く。
 
もちろん選手個々の能力は大切なんだけど、それを状態も含めて見極めて使うのは監督で、
その采配次第で勝ちにも負けにも転がるような試合ばかり。
その相手監督とタツミの見えない駆け引きが一番の楽しみどころかもしれません。
ピッチの上だけでなく、広報やスカウトの活動、地域のファンとの触れ合いを描く場面もあり、
これだけ大風呂敷広げてるスポーツ漫画なんて他にないと思います。
 
ただそれがこの漫画の特別なところであり、弱点ともなっていると思います。
どんな読者でも楽しめるようなポイントを作っている分、一つ一つの要素が少し薄い。
そして、「さあこの選手が活躍しますよ」というのを複線張って用意周到に準備しているもんだから、
逆にそのシーンがあったときに「やっと回収したか」というような気持ちになり、
純粋に熱くなったり楽しんだりできないという部分があります。
監督の心理戦のやり取りも、結局どちらが勝ったのか曖昧なままにして
結果通り「引き分け」にすることで後への含みも持たせているのでしょうが、
これがプロのリーグ戦を描く上で最大の弱点とも言える「単調さ」を払拭するには至っていません。
 
例えば高校サッカーならインターハイとか冬の選手権みたいな大会があって、
本当に強いチームと戦えるのは年1回、3年生はこれがラストだ!とか言って状況でドラマを簡単に作ることが出来ます。
対してこの漫画において、ETUはまだまだ成長途上で、優勝争いするでもなく、少しずつチームが良くなっているに過ぎない。
非常に良くできていますが、熱くなれるような「ドラマ性」が欠けているのです。
 
一言で表すなら「予定調和」
これが崩せないと、スラムダンクとかの次元にはいけないかなぁ。
 
他に気になった点
・外人がだいたい馬鹿
ちょっとこれは失礼すぎるんじゃないかと。
・ピッチの広さが感じられない
コマ割りとかアングルの問題ですが、上空やスタンドからピッチ上を眺めているような視点がほとんどないんじゃないかな。
王子のスルーパスの凄さなんかが分かりにくいし、サイドチェンジしたときの位置関係も分かりにくい。
なんか1vs1ばかりやっている印象があります。これがいまいちゲームに入り込めない要因かもしれません。
 
非常に面白い作品ですが、読めば読むほど不満点も浮き彫りになりますね。
今のところはまだ面白さが勝っていますが、14巻もかけている割には…という感じもしてきました。
そして今後の不安として、選手個々の成長を余りに描きすぎると、普通にチームが強くなってしまい、
結果的にはGIANT KILLINGでもなんでもなくなってしまうという…
さてこのジレンマにどう回答を出してくれますかね。