シガテラ (1〜6) ★★★★
- 作者: 古谷実
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/08/05
- メディア: コミック
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ヒミズで精神の崩壊と現実に潜む闇を描いた古谷実ですが、
シガテラではもっと身近で普遍的なテーマを描いています。
これを恐怖と取るのか、え、そんなもん?と見るのかは人それぞれなのかもしれません。
私の場合は、このあまりにも淡々とし、唐突に終わりを告げるラストシーンに声も出ませんでした。
度々引用して恐縮ですが「半分の月がのぼる空」で、主人公が未来のことを夢に見るシーンがあります。
その中の自分は今迷っている二つの道の片方を進んだ先で、それなりに楽しんでそれなりに幸せそうに過ごしています。
魅力的な女の人とも上手くいきそうだし、仕事も慣れて、社会人として順調な成長を遂げた自分の姿。
ただしそこには、今自分が好きな女の子の姿はなく、もはや顔も思い出せないくらいに記憶が薄れている。
シガテラはまさにこれなんです。
今の自分と確実に繋がっている未来なのに、今の自分が大切にしている思いはそこにはない。
これって怖いと思いませんか?
人は変わっていく。見た目だけじゃなくて、中身もどんどん知らない人になっていく。
そして忘れていく。大事な思いも、夢も、好きだった人のことも。
一見たいしたことを描いていないように見えるシガテラが「問題作」として扱われるのは、
この私たちが共通して持っている変化に対する恐怖をありありと描写してしまったからです。
気持ちというものの、何と不安定なことか。何と不確かなことか。
対して現実の何と残酷なことか。
漫画という非現実の世界から、見たくない現実を突きつけたシガテラ。
巻数も少ないので、一度読んでみることをお勧めします。