ハートを打ちのめせ! (1〜2) ★★★★

ハートを打ちのめせ! 1 (Feelコミックス)

ハートを打ちのめせ! 1 (Feelコミックス)

中学生男女数組の恋愛模様をオムニバス形式で描いた物語。
ちょっと雰囲気は違うんですが、YJで連載されていた「ガールフレンド」という漫画に少し似ている気がしました。
ガールフレンド 1 (ヤングジャンプコミックス)
ガールフレンドの場合は、相手が何を考えているか分からないような状態で、
付き合っているわけでも友達同士でもない曖昧な関係性だったり、身体だけの関係があったり、
駄目だと思いつつも結局性欲に負けてしまい、後になってまた不安になるような感じです。
 
 
さて、ハートを打ちのめせ!なんですが、4人の女の子が出てきます。
まあ基本的に全部どうしようもないし、勿論感情移入なんてできません。
・好きな男を身体の関係だけで釣ろうとする子
・教師を振り回して楽しんでる子
・彼氏に酷い仕打ちを受け他の子に気持ちを移そうとするものの、結局戻ってきてしまう子
・自分の中で嘘の恋愛を作り上げて、その空想に逃げる子
 
とりあえず身体だけでも必要とされればいいやっていう気持ちから、
次第に心の繋がりも求め、離れていても一緒にいられるという安心感を得たいと願ってしまう。
全く子供のままの頭の中身と、大人びていく身体。
うわべで取り繕う友達関係、卒業という別れ。
やっぱりこの物語は高校生じゃなくて中学生っていう設定が必要なんだろうなと思いました。
これだけ不安定で体当たりで、信じられないなら身体に刻み付けてやろうっていう気持ちは、
多分ほんの少しでも大人に近づいてしまうと失われていくものなんだと感じます。
 
この本に対して「感情移入できないから」という理由で評価を下げるのはどうかと思います。
これを一般的な中学生の恋愛と見てカルチャーショックを受けるというのも馬鹿げた話です。
 
ただ心の中にどっしりと座り込むような重苦しい青春の苦悩は、
ほんの少しだけあの頃に思いを馳せる足がかりにはなります。
ガキすぎて恥ずかしがったり自分に正直になれなかったりして、
こんな恋愛とんでもないっていう中学時代を過ごした身としては、
とても輝いて見えるし、憧れるし、もしこんなことをしていたら人生変わっていたのかもしれないなと思います。
 
この作者さんは短編の方が向いているんじゃないですかね。
なんといっても1コマでも凄まじい熱量を込めたものを描いてくるから、
あまりにそれが続くと精神的に疲労してしまい胸焼けを起こしてしまいます。
曖昧なら曖昧なままでいい。全てのものに答えがあるわけではないんだから。
 
少女漫画のただ甘酸っぱかったり切なかったりする恋愛とも違う、
少年漫画の都合のいい妄想を具現化したような空間とも違う、
この人にしか描けない心の奥深くを覗けるような視点がここにはあります。