僕らがいた (7〜13) ★

僕等がいた 13 (フラワーコミックス)

僕等がいた 13 (フラワーコミックス)

キツイ。読むのが辛い。ここまで鬱漫画だったとは。
 
〜あらすじ〜
矢野の母親が東京で仕事を始めることになり、矢野は迷った挙句、北海道を離れ母親について東京へ向かう決心をする。
七美は矢野に「行かないで」という本心を告げることができずに、1年後東京で会うという約束だけを交わして矢野を送り出す。
〜そして5年後
結局矢野からの連絡は途中で途絶え、七美は東京に出てきたものの、矢野との思い出をずっと引きずったままだった。
連絡が途絶えたとき、矢野は生活のためにバイトをする毎日で受験勉強もできず成績は落ちるばかり。
母親は病気で倒れ、精神を病み、やがて矢野との口げんかの翌日に自ら命を絶ってしまう。
矢野は再び自分が大切な人を死に追いやったという自責の念もあり、姿をくらますことになる…
 
 
さて、そこから突然の再会に至るのが13巻までの流れです。
結局誰もが矢野を救えなかったことに今でも苦しみを抱いていて、それでも前へ進もうとしているんだけど、
しっかりした別れがなかったことによって、ちょっとしたことで再びその気持ちがぶり返してしまう。
後悔することを分かっていても、それを選ばなかったことを後悔したくないという、逃げ道のない選択肢。
それが、結局一番大事なものを素直に欲しいと言えなかった七美と矢野の不幸の始まりです。
きちんと終わりにしなかったからいつまでも引きずるというのは分からないではない。
生きているのか死んでいるのか、自分のことなんてもう忘れてしまったのか、
相手の気持ちを何一つ知らないままで先に進めないという七美の辛さもある程度は理解できる。
ただそうなると、あれだけ大事に思っていた人に対して、自分と一緒に幸せになるという選択を放棄した矢野が、今度は人として許せなくなる。

ここにあるのは高尚な「愛」などではなく、単なる心の弱さを映した「未練」でしかない。
一途であることを美徳として描きたいのかもしれないが、竹内を滑り止め扱いし、人生を弄んでいるとも取れます。
一体どこを見ればこいつらの人生を応援したくなるのか。
どう読めばこんな身勝手どもに対して共感し「切ない」なんていう感想を抱けるのか。
 
他の作品を引き合いに出すのはどうかと思いますが、「半分の月がのぼる空」の正反対に位置する作品だと感じました。
あそこには、自分の可能性も未来も何一つ分からないけれど、大切な人を守りたいという気持ちだけは真実だ、というような
青臭い理想があって、でもそう想える相手と出会うことこそが人生のただ一つの目的なんじゃないかという希望もある。
ところがこれはどうなんだ。
希望もへったくれもない、ただ自分勝手に思い出を振りきって、
相手を苦しめて、心をぐちゃぐちゃに掻き乱して、
そんな未来を描いた上で
「あいつのことは本当に大事にしたいと思った」
なんて言われても説得力皆無だっつーの。
 
 
6巻までのレビューで七美を自己陶酔だけの酷い女だという風に書きましたが、
ここでさらに矢野までもが同じように自己陶酔して自分だけの世界に入り込んでしまいます。
救いようがないわ、これは。
いかに登場人物を不幸のどん底に叩き付けるかを描きたいだけなら、出版物以外でやってくれ。
 
残念ながら、総合評価で★1つ。
最近読んだ中では間違いなく最低の作品でした。