半分の月がのぼる空(5) ★★★★★

〜あらすじ〜
裕一はなぜか夏目に色々と連れまわされます。
里香は体力をつけようと日々散歩しています。
みゆきは勇気を出して告白なんかしています。
司はこれまで味わったことのない感情に振り回されます。
みんな、少しずつ成長していきます・・
・ 
 

この巻で初めて★5をつけたいと思います。
なんだか終始エピローグのような、おだやかな雰囲気の漂う巻でした。
そんな雰囲気に対して語られる言葉は切実にして、覚悟のいるものでした。
里香の病気は治る見込みはなく、小康状態がいつまで続くかも、そしてそれがいつ突然終わりを迎えるかも分からないものです。
だから周りの大人たちは裕一の気持ち、里香の気持ちを分かっていながらも、二人が刹那的な幸せを求めることを良しと思っていません。
そのあとに訪れる喪失の苦しみを知っているから。
それでも裕一はガキなりに精一杯考えて、里香のために自分の全てを捧げることを誓います。
例え夢が叶わなくても、人生が狂ってしまっても、今この時を里香と一緒にいようと決意します。
一気に裕一は大人になりましたね。
ライトノベルの主人公って結局肝心なところでちゃんとできずにモヤモヤしたまま終わることが多いですが、裕一はやってくれました。
 
司もお菓子のことばかり考えていたのが、恋愛にも悩みだします。
果たしてそれが恋なのか何なのか、よく分からないまま、それでも必死に誠実に、司らしく気持ちを伝えようとします。
裕一と司の、言葉にしなくても分かるだろ、っていう雰囲気が好きです。
心地いいですね。

 

必ず僕はどこかで放り出される。たったひとり、残される。
わかっている。
奪われる。
潰される。
それでも、僕は望もう。
手を伸ばそう。
里香と生きる道を、選ぼう。

 
 
こんな素晴らしい文章、なかなかお目にかかれませんね。