半分の月がのぼる空(4) ★★★★

〜あらすじ〜
里香の手術は成功したが、裕一は里香に近づくことを禁止されてしまう。
呆然とした日々を過ごす裕一、山西にできた彼女の話、そして夏目は救いを求めるように亜希子さんに過去を語りだす…
 
 
夏目の話、どこかで見たような…と既視感に囚われ思い出してみると、Clannadでした。
Clannadで朋也は渚の身体が悪いことを知りつつ、彼女の幸せを願い精一杯生きるのです。
というわけで夏目は自分の社会的成功と引き換えに、奥さんの身体が治ることを願い、地方の病院に転勤します。
しかし、色んな努力も愛情も病気には勝てず、奥さんは亡くなってしまいます。
その空しさや失ったものに囚われ、夏目は裕一にキツく当たっていたのです。
「そんな幸せなんてすぐに終わるぞ」
「今が幸せであるほど、それを失ったときに味わう苦しみは大きいぞ」
「だから、やめておけ」
 
裕一は思います。
里香を失い、忘れてしまった未来でも、自分は何も変わらず生きている。
里香との思い出を振り返ろうにも、記憶が曖昧で、その顔さえはっきりと分からない。
今自分が何もしなければ、そんな未来が待っている。
その後に得た幸せに、何の意味がある?
大切なものを簡単に手放してしまった未来に、何の価値がある?
 
細やかな心理描写、殺伐とした虚無感、失望、希望、あらゆる感情が瑞々しく描かれています。
小ネタの挟み方が相変わらず上手です。