容疑者Xの献身 ★★★

容疑者Xの献身 (文春文庫)

容疑者Xの献身 (文春文庫)

ライトノベルで読みたいものがないので、読みやすそうな小説を探してみようということでコレ。
TVドラマ化もされた探偵ガリレオシリーズの長編です。
ちなみに「探偵ガリレオ」「予知夢」はその短編のシリーズですが、こちらはあまり面白くありません。
謎解きが一瞬なので、読者側が考える暇がないというか。ちょっと無理やりな感じもします。
せめて結末の一端でも想像できるような情報を与えてくれないと、ミステリーでも何でもないと思います。
 
「容疑者Xの献身」は、ある母娘が別れた父親を殺してしまい、それを隣人の男が助けるという内容なのですが、
見事なのは本当に最後の最後までその概要が掴めないというところ。
全ての事象が一つの犯行に結集され、とんでもない結末を迎えます。
まあ度肝を抜かれますね、ラストのどんでん返しに関しては。
 
ただですね、そこに至るまでが薄っぺらいというか、
読者にそれを想像させるだけの材料が欠けているというか、(よく読めばちゃんと書いてあるんだろうけど)
なんだこの事件、何が面白いんだよ、という意識で最後まで行ってしまうという欠点があります。
そういう点は、台詞の隅々までエンターテインメントで溢れたラノベ読者としては、物足りなさがあるのです。
 
純粋な文学ファンはどう思うか知りませんが、はっきり言うと、これよりは「神様のメモ帳」の方が上です。
そこに萌えの要素があろうとも、荒唐無稽な人物がひしめいていようとも、総合的に上回っていると思います。
言葉の正確さ、描写の細かさ、そういう点だけ見て小説を論じるべきではないんじゃないでしょうか。
読んでいるとき面白いと感じたかどうか、後にどれだけの感慨を残したか、結局それが作品の価値の全てだと思います。
手法だけに囚われてその本質が見抜けないのは、何でも一くくりにして狭義でしかジャンルを見れないからじゃないでしょうか。
ハリウッド映画は面白い、日本映画はつまらない、そう言っているのと同じですね。