岳 (1〜11) ★★★★

岳 (1) (ビッグコミックス)

岳 (1) (ビッグコミックス)

山岳救助のお話です。
人々が山に登る理由はそれぞれで、主人公の三歩は彼らの思いを全て受け止め、必ずこう言います。
「よく頑張った!」
 
1話完結形式で、色んな思いを抱えて山に登る人々と、救助ボランティアの三歩、新米救助隊員のクミの交流を描きます。
1話完結なので大きなストーリーはないのですが、これは三歩の超人的な活躍を描くと同時に、クミの成長を描くのがメインとなっています。
女性隊員のクミは三歩のように人を担いで山を降りることもできず、先輩たちの厳しい判断に対して、感情でそれを拒んでしまいます。
三歩はいつもそんな彼女をフォローし、間違った判断をしても、「よく頑張った!」と褒めてくれます。
そうやって失敗を繰り返し、山の怖さを知り、同時に山に登る人たちの気持ちを理解していくクミのことがかわいくて仕方ないんだろうなーと感じます。
 
この作品は、3話に1回くらいのペースで人が死にます。
そりゃそうですね、崖から転げ落ちたり、雪山で3日も遭難してれば人は助かるはずはないのです。
そこで奇跡のようなことが起こらないところが、この作品の良いところであり、悪いところです。
良いところは、ひたすらリアルで、だからこそ伝わる人々の思いの深さを感じることができるところです。
悪いところは、救助隊の話なので仕方ないのですが、山が必要以上に恐ろしいところであると描かれているところです。
この作者さんは登山が好きで好きで仕方ないんだろうけど、誰もが三歩のように達観して山を友にすることはできないし、ツアー気分で気軽に山道を歩く人もいるでしょう。
これを読んで山に登ろうと思う人よりも、興味はあるけど怖いから止めとこうって思う人の方が多いような気はします。
 
ちょっと怖がらせすぎなのかな?というバランスの具合なんですが、私の場合は山に対しては畏怖の感情しか芽生えませんでした。
でも、山に登ろうという人の気持ちは少し分かったような気もします。
多分、街にいたら見えない景色や心の中が、山に行くと見えるんでしょう。
一人悶々と悩んで答えの出ないことが、山に行けば一瞬で分かってしまうのかもしれないですね。
 
巻が進むごとに、話のバリエーションが増えてきます。
高水準安定型ですね。