NHKにようこそ! ★★★★★

NHKにようこそ! (角川文庫)

NHKにようこそ! (角川文庫)

〜あらすじ〜
ひきこもり歴4年の主人公が、再会や出会いを経て、ひきこもり脱出を狙う話。


さて、これは面白かったです。
とりあえず文章のテンポの良さ、トリップしているときのぶっ飛び具合。
物語の対象自体のいびつさ。登場人物の抱える深い闇。
日本版トレインスポッティングとでもいいましょうか。
普通にセンスの良い監督が映画で撮ったら、海外でも受けるんじゃないだろうか。

ネタバレになりますが、宗教少女岬ちゃんの言う「プロジェクト」とは、自分よりダメな人間を見つけ、その人を見下し優しくすることで、自分のことを好きになってもらって、ずっとそばにいてもらおう。という精神的に歪んだ計画で、そんなものを立てるからには勿論、岬ちゃんの心も闇に(病みに)埋もれています。
 
うーん、なんか最近別の本でも似たようなシチュエーションを読んだことがあるような・・・
まあこちらの作品の方が古いので、最近読んだ方がオマージュしてるんでしょうが。
 
ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂでは「チェーンソー男」として具体的なものとして描かれていた”自分を苦しめる得たいの知れないもの”は、この作品では「NHK(日本ひきこもり協会)の陰謀」という抽象的なものとして、主人公を納得させるための一つの対象として描かれています。
もちろん主人公はそれを信じ込んで、NHKを倒せば自分はハッピーになると思っているわけではなくて、そんな陰謀組織があって自分を意図的に苦しめているなら、自分がこんなどうしようもない存在であることもしょうがない、という逃げでしかありません。
 
ネガティブハッピー〜と、描いているテーマもシチュエーションもかなり似ていると思います。
ただし、こちらの方がより現実的な、「大人になる悩み」とでも言いましょうか、そういう視点で描かれているため、より楽しめました。
おすすめです。